佳枝ちゃんとふたり、
いつも、いつか、訪れたいと思っていた。すぐにでも、ずっと、訪ねなければならないと思っていた。
みすゞを見つけ、憧れ、焦がれ、探し求めて、やっと少しだけ、その面影をつかまえ、手のひらに残された彼女の片鱗や眼差しを、現代社会に生きるたくさんの、それを必要とする人々のために、もう一度、その隠れていた素晴らしい詩や童謡を、明るい方へ導くために。
矢崎先生はいったい幾度、この道を通ったのだろう。時にかの、大村祐子さんとともに、ひとつひとつ、あのかわいらしい文字を、すべてを注いだ512篇の詩を、肖像を、いったいどれだけの昼と夜をかけて、なぞり、たどり、形にしていったのだろう。
JULA出版局。
金子みすゞで、ビルが建ったと人の言う、あまりにも慎ましく、ただひたすらに、美しく優しく小さく無垢なものを愛そうとした、矢崎先生と、想いをともに歩んできた、下町の、印刷会社の立ち並ぶ細い路地の、中でもひときわ小さな小さな出版社。
いまはもう、ここには或らねど、その熱量はそのままに。
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